トラディショナルボック

トラディショナルボックは、ドイツのバイエルン地方、特に16世紀から17世紀にかけて南ドイツで発展したビールスタイルです。もともと北ドイツのアインベックで造られていたこのビールは、17世紀にバヴァリア（バイエルン）公国のマクシミリアン1世がアインベックから醸造家を招いてミュンヘンで造らせたことで、南ドイツを代表するビールとなりました。彼が持ち込んだ技術とレシピは、ミュンヘンのビール文化に大きな影響を与え、ボックビールがバイエルン地方の名物となるきっかけとなりました。

当初、ボックは「アインベック（Einbeck）」と呼ばれる街で造られていましたが、バイエルン地方で広まるにつれて「ボック」と呼ばれるようになりました。これは、バイエルン方言で「山羊（bock）」の発音が「エインベック」に似ていたためだと言われています。そのため、ボックビールは山羊のマークがラベルに描かれることが多く、ドイツではボックビールが山羊と関連付けられています。

トラディショナルボックは、アルコール度数が比較的高く、濃厚でリッチな味わいが楽しめます。特に寒い季節に温かい料理と共に楽しむのに適しており、シチュー、ローストした肉、そしてハードチーズとのペアリングが絶妙です。そのコクのある甘みとしっかりとしたボディが、料理の味わいを引き立て、温かな食事のシーンをさらに豊かにします。

修道士たちが断食中に栄養補給として飲んでいた「液体パン」としての歴史もあり、ボックビールは伝統と文化が織り交ざった豊かな背景を持つビールです。